【開店】飫肥藩家臣の旧家がレストランとして再生 - 武家屋敷 伊東邸/日南市


伊東邸外観

なぜか今は千葉県から単身赴任中ですが、じつは日南市にルーツを持つDiceです。

以前、日南市飫肥でまちなみ再生が進みつつあることをレポートしましたが、その中でも報告のあった旧伊東家のリノベーションが完了し、「武家屋敷 伊東邸」として4月の末にオープンしたというので、5月某日、JR日南線に乗って出かけてきました。

場所は、宿泊施設「季楽 飫肥」として再生された合屋邸の通りをはさんだ向かい側になります。
車でアプローチする場合は、飫肥城観光の際に車を駐める拠点となる飫肥観光駐車場の、県道432号線をはさんだ下側に駐車場が設けられています。

 

往時の面影を残しながらフルリノベーション

武家屋敷 伊東邸入口

飫肥藩の藩主伊東家と同じ姓を持つ家は、江戸時代が終わる時には飫肥城下に4軒あったそうですが、この伊東家は近年住む人も無く、このままでは荒れてて朽ち果てる運命にありました。

そこを、日南市在住の実業家・本田清大さんが中心となって再生に乗り出し、建築デザインをてがける鬼束準三さんらとともに、再生プロジェクトを進めてきました。

しかし、想像以上に元の建物の傷みが激しかったため、いったん全部を取り壊し、元の構造を復元しながら、新しい部材を用いて再建築されたのだそうです。

 

内部は、落ち着いた雰囲気の飲食店に

テーブルと椅子が並ぶ内部

付け替えられた玄関から中に入ると、当時の座敷があったところは、一続きの大きな空間としてテーブルと椅子が並べられ、最大で40人が座ることのできるレストラン「おび茶寮」に生まれ変わっていました。

奥の床の間には、宮崎市在住の書家・今井美恵子さんの書が飾られているのが見えます。

武家屋敷 伊東邸内部

天井が取り払われて屋根裏の小屋組みが見えて開放的なのですが、床面から梁までの高さは180cm弱しかないので、背の高い方は頭を打ちそうです。
しかし、これが江戸時代の建物の寸法なのですね。

南側の庭に面した部分の開口が広く、往事は障子と雨戸だった部分がガラス窓に変えられているので、室内は自然な明るさに包まれています。

土間に置かれた飫肥杉のテーブル

一段下がった土間の部分にも、飫肥杉の大きな一枚板で作られた6人掛けのテーブルが3つ置かれ、車椅子での利用にも対応しています。

 

羽釜で炊いたごはんが自慢

羽釜

特別に厨房も見せていただきましたが、客席側から窓ガラス越しに見える所に大きな羽釜が2つ備えられていて、ここで、ごはんを炊く様子を見る事ができるようになっています(訪問時は、たくさんの開店祝いの胡蝶蘭が視界を邪魔してましたがw)。

ごはんの炊き上がり

ちょうど、ごはんが炊き上がったところでした。
木製の重い蓋を上げると、炊きたてのごはんの香りがふわっと立ち上ってきました。
美味しそう!

 

朝食メニューは2種類

卵かけご飯セット

9時から11時は朝食タイムで、メニューは「卵かけご飯セット」(800円)と「焼き魚御膳」(1,000円)の2種類。

訪問時は朝食タイムだったので、まずは「卵かけご飯セット」をいただくことにしました。

双子の卵

大ぶりの卵を器に割り入れると、なんと黄身が二つある双子の卵でした!
この卵、日南市北郷町で有精卵を作っている養鶏農家から仕入れているもので、特別に双子のものだけを選んで入れてもらっているのだそうです。

ご飯にかけていただきます

その双子の二黄卵を箸で軽く割りほぐして、卵かけご飯専用醤油を入れたら、羽釜で炊いたごはんにかけていただきます。

ごはんの甘みと卵のこくが渾然一体となって口の中に広がり、滑らかに喉を落ちていく幸せ。
味噌汁と香の物を間にはさみながら、美味しくいただきました。

 

昼食メニューは3種類

生まぐろ丼まぶし
画像提供:おび茶寮

11時から14時は昼食タイムとなり、提供されるメニューは「だし巻きたまご焼御膳」(1,000円)、「チキン南蛮御膳」(1,200円)、「油津港水揚げ生まぐろ丼まぶし」(1,620円)の3種類。

この「油津港水揚げ生まぐろ丼まぶし」は、ひつまぶしのように様々な食べ方で、まぐろ漁の拠点である同じ油津で揚がったまぐろを楽しむことができます。

チキン南蛮御膳
画像提供:おび茶寮

「チキン南蛮御膳」は、タルタルソースが別皿で供されるのがひとつの特徴のようです。

だし巻きたまご焼

残念ながら卵かけご飯をいただいたばかりだったので、昼食メニューには手を出せず、「だし巻きたまご焼」だけをいただきました。
大根とにんじんの2色のおろしが添えられているのが面白いですね。

飫肥と言えば、厚焼き卵が有名ですが、あちらはプリンのように甘く焼いてあるのでデザート向き。
こちらの「だし巻きたまご」は、上質のだしを効かせてふっくらと焼き上げられていて、噛むとじゅわっとだしの旨味と味醂の甘みが溢れてきました。

 

雲に隠れたカフェメニュー

雲隠れぜんざい

ごはん物は時間限定ですが、カフェメニューとドリンクメニューは、朝9時の開店から17時まで通して味わうことができます。

そのカフェメニューとして提供されているのが、「雲隠れぜんざい」(680円)。

白い雲のように器に盛られているのは綿飴で、横に添えられて黒千代香には、熱いお湯が入っています。

福餅が現れた

綿飴の上から黒千代香のお湯を注ぐと、綿飴が溶けて、中から4つに割られたあんこ入りの福餅が現れます。これはなかなか面白い趣向ですね。
福餅を崩しながらいただくと、しっかりとお餅入りのぜんざいとして楽しめました。

 

入口横にはジェラート&ジューススタンドも

おれんじ亭+

スイーツと言えば、入口の横の小部屋には、「おれんじ亭+(プラス)」というジェラート&ジューススタンドがあって、「おび茶寮」の店内で注文して食べることもできますし、そのままテイクアウトして街歩きすることもできるようになっています。

こちらは、日南市細田地区にある、農園直営の手づくりジュース直売所「おれんじ亭」の支店という位置づけのようで、季節の果物を使ったフレッシュジュースやジェラート、アフォガートなどのメニューがあります。

日向夏のジェラート

最後のデザート、何にしようか悩みましたが、季節限定の「日向夏のジェラート」(650円)をコーンでいいただきました。
日向夏の爽やかな酸味と香りが味わえる、ちょっと大人のジェラートで、なかなかに美味しかったです。

 

現代に蘇った武家屋敷を支える若武者

本田社長(右)と関谷料理長(左)

今回、お話を伺ったのは、この「武家屋敷 伊東邸」を運営するSTAYLE-C株式会社代表取締役の本田清大さんと、「おび茶寮」の料理長の関谷亨さん。
お二人とも日南市のご出身で、特に関谷料理長は地元・飫肥の在住だそうです。

営業時間は今のところ9時から17時までですが、今後はメニューを充実させつつ、イベントを開催したり、夜、軽く飲めるようにしたりといった展開も考えて行きたいとのこと。
この日も、ランチの新メニューの試食が行われておりました。

朽ち果てる寸前だったところから、往時の面影を残して蘇った伊東家。
まだ、庭にも十分に手が入っていませんが、これから年月を経るに連れて苔の美しい落ち着いた庭になり、我々の目を楽しませてくれることでしょう。
リニューアルして終わりではなく、これからの成長が楽しみな新しい時代の武家屋敷、是非一度訪れてみてください。

 

【武家屋敷 伊東邸】
住所:日南市飫肥8丁目6-10 → マップ
営業時間:9:00~17:00 (ランチタイム 11:00~14:00)
定休日:火曜日(祝日およびクルーズ船寄港日の場合は翌日の水曜日)

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この記事を書いた人

2014年4月からテゲツー!ライターに参加。
趣味は料理で、2016年からフードアナリスト、2018年からは冷や汁エバンジェリストとしても活動中。
2020年4月に宮崎での7年間の単身赴任生活を終え、2022年3月まで東京・新宿にある宮崎県のアンテナショップを統括した後、さいころ株式会社を設立、同社代表取締役。
テゲツー!のアドバイザーで後見人的な人で、玄人受けするその記事にはファンも多い。

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