しなやかで優しい焼酎に出会う旅 - 古澤醸造合名会社 / 日南市


嫋なりをロックで

テゲツー!焼酎担当、Diceです。
平均すると週に5日はアルコールを口にしていますが、そのうち半分以上は宮崎県産の焼酎です。

そんな私のところに、また1本の焼酎が届きました。
「嫋なり」
「たおやかなり」と読みます。

日南市大堂津にある古澤醸造合名会社で製造されているものですが、日南市内の酒屋の女将達が企画し女性杜氏が醸した焼酎で、その誕生には深い物語があるのです。

 

ディーゼルカーでGo!

大堂津駅に到着

日南市の敏腕マーケティング専門官・田鹿倫基さんからの情報で、「日南の酒屋の女将、女性の杜氏が案内する、日南焼酎見学ツアー!」が10名限定で行われるということを知ったのが、開催の前日。
空きがあればと田鹿さんに連絡してみたら、幸いにもまだOKとのことだったので、早速エントリーして、翌日の午後、宮崎駅からJR日南線に乗って、大堂津駅に降り立ちしました。

 

創業127年の焼酎蔵

古澤醸造合名會社

大堂津駅から徒歩10分弱、到着したのが、古澤醸造合名会社

1892(明治25)年創業なので、今年で127年目という由緒正しい焼酎蔵で、創業当時から続く土蔵の中で、昔ながらの技術を受け継ぎながらが焼酎造りが行われています。

社名に「醸造」という文字があるように、昔は清酒や味噌、醤油、酢を造る傍ら焼酎も製造していたそうですが、近年は焼酎専業になっています。

古澤醸造の焼酎達

代表銘柄は「八重桜」で、「八重桜」の名で、芋、麦、米、蕎麦の4種類の焼酎が造られています。

古澤昌子さん

代表社員の古澤昌子さんはこの蔵の5代目で、全国でもまだまだ数の少ない女性杜氏のひとりです。

この日は、古澤さんの案内で、焼酎造りが行われる蔵の中を見せていただきました。

 

焼酎の製造工程

製麹室

まずは、創業当時から続く麹室(こうじむろ)へ。
昔は、ここで蒸した原料米に麹菌を種付けして、製麹(せいきく)していたそうですが、今では、1961(昭和36)年に導入した三角棚での製麹がメインになっています。

原料米は、麹がよく回るように、粘り気の少なくくっつかない長粒米(タイ米)や、酒造専用米が使われるとのこと。

一時仕込み

続いて、一次仕込み用の甕が並ぶ土蔵へ。
土蔵で仕込みを行う焼酎メーカーは県内唯一とのこと。土蔵は温度変化が少ないので、甕を地中に埋める必要がないのだそうです。
甕の中では、麹の付いた米と水、酵母が混ぜられ、発酵の最中。

二次仕込み

次は、一次仕込みの済んだものに蒸して粉砕された芋を加えた二次仕込みのタンク。
芋の糖分が酵母によってアルコールと二酸化炭素に分解されており、ぶくぶくと泡を発しています。
時折、中のどろどろした液体がガスの圧力で暴れることがあり、タンクの外まで飛び散ることもあるのだとか。

二次仕込みの段階で芋を加えれば芋焼酎、米を加えれば米焼酎、麦を加えれば麦焼酎というように、何を加えるかによって、焼酎の種類が決まります。
芋焼酎でも、使用する芋の品種の違い、更に、芋を処理する時に、土をどこまで落とすのか、へたを取るのか、皮をむくのか残すのかなど、処理の違いによって、最終的な風味に違いが出てくると、古澤さんはおっしゃっていました。

櫂入れ

二次仕込み中のタンクをかき混ぜる「櫂入れ」も体験させていただきました。
全員はできませんでしたが、「櫂入れ」できたのはなかなか貴重な体験だったと思います。
しかも、最初の人は、層になったタンクの中身を櫂を通して感じることができる、得がたい感触を味わえたはずです。

蒸留器

二次仕込みが終わると、今度は蒸留の工程へ。
蒸留器は、それぞれの焼酎蔵で工夫が凝らされていて、大きさや首の部分の長さや形状など、様々に違いがあります。
左側の鈍い銀色のタンクが蒸留釜で、加熱されて蒸発した成分が上部のパイプから右側のステンレス製の冷却槽に入り、その中でで冷やされて、隣の部屋の地中にある貯蔵槽へ流れて行きます。

貯蔵タンク

こちらは、最終的な製品を貯蔵するための貯蔵タンクが並ぶ蔵です。
飫肥杉で造られたこの蔵は、2009(平成21)年に完成したもので、温度変化が穏やかなのが特徴なのだとか。

嫋なりのタンク

「嫋なり」の入ったタンクもありました。
タイ米で造られた米麹に、黄金千貫(コガネセンガン)という芋を使って作られていることがわかります。

 

交流会でいただいた3種類の焼酎は

乾杯

見学が終わった後、大堂津と油津の間にある猪崎鼻という岬に建つ「創作料理よしの」に移動して、参加者と主催者との交流会が行われました。

嫋なりといいっちゃが

会場には、今回の主催者である「日南四葉会」がプロデュースする焼酎、「嫋なり」、「嫋なり 三年古酒」、「IITCHAGA(いいっちゃが)」が置かれていました。

「嫋なり」は、前述のように米麹(白麹)と黄金千貫で造られた芋焼酎で、度数は25度。
芋らしさを感じるしっかりとした造りで、フルーティーでふくよか香りとすっきりとした口当たりの良さが特徴。
お湯割りでいただくと香りが開いて、しっかりと甘みを感じます。

「嫋なり 三年古酒」は、その「嫋なり」を蒸留から3年以上寝かせて瓶詰めしたもので、度数は28度。
寝かせることでよりまろやになっており、ロックや水割りでも良さそう。

「IITCHAGA(いいっちゃが)」は、地元産の原料にこだわり、米麹には日南市坂元棚田産の「ひのひかり」を使用し、芋は串間市産の宮崎紅という、焼き芋で食べるような皮が赤く中は黄色い芋が使われています。
白麹仕込みの度数は25度で、「嫋なり」と比べると、より洗練された香りと、とろっとした甘みを感じます。

 

日南四葉会

四葉会の皆さん

もともと「嫋なり」は、日南市内の小売酒店4店舗の女将さん達が2006(平成18)年に結成した「日南四葉会(にちなんしようかい)」が、古澤醸造の女性杜氏・古澤昌子さんに相談を持ちかけて、途中のテイスティングも自ら行いながら作り出し、2007(平成19)年4月から販売されている焼酎です。

「日南四葉会」は、酒類販売の規制緩和により街中の小売酒店の販売が落ち込む中で、「このままではいけない、なんとかしよう。」という危機感を持った女将さん達が、プライベートブランドの商品開発を行うとともに、県南地方の焼酎文化を守りながら地域の活性化を図ろうと結成し、春の蔵出しと秋の櫂入れに合わせて年2回のイベントを行い、その広報活動も熱心にやられています。
今回のツアーもそのイベントの一環で行われたものでした。

最初は4店舗4名の女将で始まった四葉会ですが、2012(平成24)年から古澤さんもメンバーに加わり、その後、残念ながら飫肥の初鹿野酒店が閉店となり、現在は下記の3店舗の女将さんと古澤さんの4人で運営されています。

■汐元酒店
住所:日南市大字下方141-3 → マップ
電話:0987-27-0213

■田中酒店
住所:日南市材木町6-12 → マップ
電話:0987-22-2557
Webサイト:https://tanakasaketen.jimdo.com/

■山元酒店
住所:日南市上平野町2-15-8 → マップ
電話:0987-23-3751
Webサイト:http://www.yamamoto-saketen.net/

驚いたことに、3名の女将さん達はいずれもアルコールは飲めないそうですが、古澤さんによれば、皆さん食生活がちゃんとしていて味覚はしっかりしているので、焼酎造りの際のテイスティングは問題無かったのだそうです。

上記の3種類の焼酎は、これら3店の限定販売となっていますので、店舗で直接購入されるか、山元酒店のオンラインショップでお求めください。

酒屋の女性がプロデュースし、女性杜氏が醸す焼酎の優しくもしなやかで力強い味わいを、是非とも堪能してみてはいかがでしょうか!?

 
【古澤醸造合名會社】
住所:日南市大堂津4-10-1 → マップ
電話:0987-27-0005

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この記事を書いた人

2014年4月からテゲツー!ライターに参加。
趣味は料理で、2016年からフードアナリスト、2018年からは冷や汁エバンジェリストとしても活動中。
2020年4月に宮崎での7年間の単身赴任生活を終え、2022年3月まで東京・新宿にある宮崎県のアンテナショップを統括した後、さいころ株式会社を設立、同社代表取締役。
テゲツー!のアドバイザーで後見人的な人で、玄人受けするその記事にはファンも多い。

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